内視鏡を使った、外科手術の必要のない「がん」の治療法
どのような「がん」が内視鏡治療の対象になるのか・・・?
最近では、検査方法の進歩により、早期のうちに見つかるがんが多くなっています。
がんの治療方法には様々なものがありますが、リンパ節に転移している可能性が極めて低い早期のがんに対しては、内視鏡を使用し、おなかを切ることなくがんのみを切除できるようになってきています。
おなかを切ることがないので、入院日数も比較的短期間ですみます。
内視鏡を用いたがんの治療法について
食道や胃、大腸などの消化管の「粘膜内」にとどまっていることが判明した「早期のがん」が対象となります。
一般に、1.一度に取れる部位と大きさであること、2.リンパ節転移の可能性がほとんどないことが基本的な条件とされています。
さらに細かくいえば、腫瘍のある場所や形状、腫瘍の深さや大きさなどに分類され、治療できる条件が決まっています。
ESD(内視鏡的粘膜下層剥離術)とは?
内視鏡を使用したがんの治療方法にはいくつか種類がありますが、最近になって注目されはじめた新しい治療法があります。
ESD(内視鏡的粘膜下層剥離術)とよばれている治療がそれです。
この治療は、様々な種類の内視鏡用電気メスを使用し、がんの病変部を粘膜ごと剥がしとる方法です。
もうひとつがんの切除に使われている方法で、EMR(内視鏡的粘膜切除術)という術式がありますが、この方法では、切除できる腫瘍の大きさに限界があります。ESDでは、従来の方法では切除不可能だった大きさのがんでも摘出することが可能です。
しかし、細かな操作を必要とするため、比較的治療時間が長くなります(がんの大きさや場所にもよりますが、1時間〜3時間程度かかります)。
当院では、平成16年3月よりこの治療を開始し、その治療件数は増加傾向にあります(表)。上記にも述べたように、ESDは基本的に病変の大きさに制限がないため、当院では、通常ならば外科的手術になるような、10cm大のがんをESDで摘出した症例もあります。
ESDを実施するにあたり、注意しなければならないこと
病変によっては治療に時間がかかる場合があります。また、治療に伴うリスク(偶発症と呼ばれています)が考えられます。
偶発症には、出血や穿孔(消化管に穴があくこと)、治療のときに使用する鎮静剤や鎮痛剤による副作用などが挙げられます。
基本的には偶発症が発生しないような細心の治療を心がけておりますが、仮に発生した場合でも、その場で適切・迅速な処置を行います。
まれに外科的処置(緊急手術)が必要となることもありますので、必ず事前に医師から十分な説明を受けてください。
その他偶発症について不安な点や疑問な点があれば、ご遠慮なくお問い合わせ下さい。
治療までの流れ
1.まずは内視鏡検査を行い、病変部の精密検査を行います。必要であれば、病変部の深さを測ったり、組織採取を行い病理検査を実施します。
2.後日、内視鏡所見や組織検査結果をもとに、ESDが可能かどうかを判断します。可能であれば、ESDへむけて医師より十分な説明を行います。
3.基本的に治療前日に入院となります。通常の内視鏡検査と同様、前日の夜から食事を控えてください。
4.治療時間になったら、内視鏡室で治療に必要な処置(鎮静剤や鎮痛剤の投与など)を行います。
5.投薬により、一時的に強い睡眠状態になります。このあいだにESDを実施します。治療時間は、病変の大きさや部位、出血の状況などにもよりますが、1時間〜3時間程度かかります。処置中も必要に応じて鎮静剤や鎮痛剤を使用するので、痛みはほとんど感じません。
6.病変剥離後、剥離した組織を回収し、止血処置をしたら治療終了です。
7.治療直後、医師よりご家族の方に治療の結果をご報告いたします。
8.念のため、翌日に再度内視鏡検査を行い、出血の有無を確認します。
ESDの治療手順
1.マーキング:内視鏡を消化管内へ入れ、電気メスを使って病変の周辺に切り取る範囲の目印をつけます。
2.局注:粘膜下層(病変部の真下)に、専用の注射針を使って薬剤を注入し、病変全体を浮き上がらせます。
3.切開:マーキングした部分に沿って、針状の電気メスを使って切り込みを入れます。
4.粘膜下層の剥離:剥離専用の電気メスを使用して、少しずつ慎重に病変を剥がしていきます。
5.切除完了:最後まで剥離することで、病変部の切除が完了します。
6.止血:切り取ったあとの表面に止血処理を施します。止血用の処置具に電気メスの高周波電流を流し、焼き固めることで止血します。
7.回収:専用の回収器具で切り取った病変を回収します。回収した病変は病理検査へ出し、根治しているかどうかの判断を行います。
8.確認:翌日再度内視鏡検査を行い、出血の再確認を行います。出血が認められれば、更に電気メスを使って焼き固める処置を施します。
ESDにむけて
治療件数が増加すると共に、早期がんを発見するため、精度の高い内視鏡検査が必要になってきました。そこで当院では、通常の内視鏡検査に加え、更に精度の高い検査を行うため、最新の装置を導入しました。
1.NBI(Narrow Band Imaging:狭帯域光観察)システム
血液中のヘモグロビン(酸素を運ぶ物質)に反応する特殊な光を出すことで、粘膜のパターンを強調させることができ、肉眼でははっきりとわからない病変の範囲を容易に観察することができます。これにより病変部の状態や範囲が的確に判断でき、早期がんの発見につながります。
2.拡大内視鏡スコープ
通常の内視鏡スコープに比べ、約80倍の倍率(赤血球が確認できるくらいの倍率)で拡大して病変部を観察できるスコープです。病変部を拡大観察することで、正常組織とそうでない組織の見分けがつき、病変部の的確な観察が可能となります。
3.超音波内視鏡
内視鏡スコープの内部を通すことのできる超音波プローブを使用して、内視鏡をしながらエコー検査をすることができます。具体的には、病変部の深さを測るために使用されます。まずは内視鏡スコープで病変を確認します。その後、超音波プローブをスコープからいれ、病変部に密着させることで病変の深さが観察できます。肉眼ではわからない病変の深さの測定も、この装置を導入することで可能となりました。
実際には、これらの装置を全て同時に使用し、今までにない病変部の精密な検査が可能となっています。これによりESDで切除可能な病変の判断が容易にできるようになり、今後の治療の計画も立てやすくなりました。
手術件数
| 手術名 |
平成16年度 |
平成17年度 |
平成18年度 |
| 内視鏡的粘膜下層剥離術(ESD) |
15 |
28 |
35 |
| 内視鏡的早期悪性腫瘍粘膜切除術(EMR) |
6 |
2 |
2 |
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