社会医療法人 共愛会

広報誌『しおかぜ』2018年秋号

社会医療法人 共愛会広報誌 しおかぜ 2018年秋号

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抗生物質の適正使用支援チームが発足しました

耐性菌の蔓延は全人類にかかわる、地球規模の問題です。

人類の歴史を振り返りますと感染症は、有史以来人々の生命を脅かす最大の病気でした。感染症に対するお薬としてペニシリンという抗生物質(抗菌薬とも言います。細菌に効くお薬です)が発見されたのは今からわずか70年前のことです。ペニシリンによって、死に至る病であった肺炎が治る病となりました。ところが、最初の抗生物質であるペニシリンが使われるようになって、わずかな時間でペニシリン耐性菌(ペニシリンが効かなくなる菌をペニシリン耐性菌と言います)が出現しています。その後の抗生物質による感染症治療の歴史は、新しい抗生物質の開発とそれが効かない病原性のある細菌の出現の繰り返しの歴史でした。ところが、新たな抗生物質の開発は、ほぼ20年前からありません。人類は抗生物質の開発により感染症の脅威から基本的に解放されましたが、今の趨勢で抗生物質を使用すれば、今後人類が使用可能なすべての抗生物質に効かない菌によって、抗生物質が無かった時代へと逆戻りします。
人類は100年足らずで、再度感染症の脅威の前に立ちすくまなければなりません。日本政府は世界保健機関(WHO)の呼びかけに応えて耐性菌の蔓延を防ぐ国際的な行動に参加することを表明し、そのために従来行っていた院内感染対策に加え抗生物質の適正使用を国の政策として推進しています。

抗生物質の適正使用支援チームの役割。

耐性菌の出演を防ぐ最も確実な方法は不必要な抗生物質を使わないことです。抗生物質の使用量が多いほど耐性菌が出現しやすくなります。従来から、私たちは感染症治療において入院・外来を問わず適切な抗生物質を十分量使用し、可能な限り短期で終わるよう努めています(抗生物質の適正使用)。しかし、現代の進歩が速く複雑な医療の中で、現場の医療チームの努力のみでは最新の医療を提供するには限界があります。最新の感染症治療のためには、お薬に精通した薬剤師、細菌検査に詳しい検査技師、そして感染症の伝搬や診療などの専門的訓練を受けた看護師、感染症の診断と治療に詳しい医師からなるチームのサポートが必要です。私たちは、抗生物質の適正使用支援チームの発足でより高度な感染症医療を提供できると考えています。

抗生物質の適正使用支援チームの今後の活動「院内から外来へ」

現在、日本の抗生物質使用量の約92.4%を外来で出される飲み薬が占めています。日本での実際は、今のところデータが無くわかりませんが、アメリカで処方された抗生物質の30%が適正ではなかったとの報告があります。
今後、共愛会全体で外来における抗生物質の処方の実際を調査し、適正使用に努めていきたいと考えています。
外来での抗生物質の適正使用には、何よりも患者さんの御理解を得ることが必要です。例えば、ウイルスが原因であるカゼには抗生物質は効果がありません。カゼの治療には、抗生物質が効かないことを納得していただく必要があります。そのためには、私たち医療従事者が、患者さんに病状を丁寧にご説明し、よく話し合いながら感染症の診療に当たることが必要です。
次に、抗生物質の適正使用の努力をするのはもちろんのこと、さらに何よりも感染症の予防が重要なことを、地域の住民の方々と共に再度認識を深めていくことが必要です。感染症を予防できれば、抗生物質は必要ないのですから。感染症の予防のためには、手洗い・予防接種・咳エチケット・うがいなど誰にでもできることを実行することが大切です。
先人の努力で人類が手に入れた抗生物質の効果を持続させ、感染症の脅威から基本的に解放された現在の状況を未来に引き継ぐために、感染症の知識の地域への普及もまた抗生物質の適正使用支援チームが、今後取り組まなければならない課題であると考えています。

認定看護師からのmessge ~伝えたいこと~Vol.3

戸畑共立病院 がん治療センター
がん放射線療法看護認定看護師
市川 清子

放射線治療について


がん治療には大きく分けて、手術・抗がん剤治療・放射線治療の3つがあります。
がんの種類によってさまざまな治療がありますが、その中のひとつ放射線治療のケアについて簡単にお伝えします。
放射線は目に見えず、体に当たっても何も感じません。また治療開始当初は何の症状も現れず、これから何が起きるのか予測もつきません。そのため当院では、治療部位別に作成したパンフレットを使って治療前オリエンテーションを行っています。

◎治療前に注意することは?

特に禁止することはありませんが、口の中が治療範囲に入る方は、歯磨きやうがいを行い口腔内を清潔に保っておきましょう。乳房の治療をされる方は、治療時に手を挙上しますので、手術後に手をあげにくい場合はリハビリを継続してください。前立腺の治療を受けられる方は、便秘をしないようにしましょう。またタバコは害になりますので、禁煙をお勧めします。

◎皮膚炎について

治療をする部位によって、副作用や気を付けていただくことは異なりますが、どの部位でも共通することは皮膚炎です。放射線を当てたところが一時的に日焼けのような症状が起こることがあります。刺激や摩擦をさけ、清潔にしておくことが大切です。
皮膚炎は、治療後2週間程度でピークを迎え、1か月程度で回復していきます。これは通常の経過ですので心配はいりません。

◎治療後の副作用について

放射線治療には、治療後しばらく経ってから起こる副作用があります。照射範囲に肺が入る方は、風邪をひかないように気を付けて、咳や高熱が出た場合は受診するようにしましょう。骨への治療をされた方は、骨折予防のため、半年程度は無理に体をひねったりこけたりしないよう注意してください。また疲れやすく感じる方もいますので、休息を上手にとりましょう。

放射線治療は、医師をはじめ放射線技師、看護師など多くのスタッフが共同で行っています。その中で看護師は、治療前・中・後の期間を通し、患者さまを支えています。がん治療センターでは、看護外来を設置し、ご相談をお受けしています。治療への不安や副作用、医師に聞きにくいことなどがありましたら、お気軽にお声掛けください。

スタッフレポート

石橋 七彩さん
戸畑共立病院 歯科口腔外科 歯科衛生士

きめ細かな配慮をすることで患者さまに安心感を与える口腔ケアを。

当院の歯科口腔外科は患者さまの歯科診療だけではなく、歯科疾患全身麻酔手術、入院患者さまの口腔管理、在宅患者の訪問診療、関連施設への往診など幅広く携わっています。
特に入院患者さまの口腔管理は、とても重要な役割を担っています。口腔ケアを行うことで、薬の副作用による口内炎、粘膜炎や手術後の肺炎、誤嚥性肺炎を予防することが出来ます。
また、全身疾患の治療を行っている場合は、さまざまな理由で歯科治療が難しくなる場合もあります。このため事前の口腔内確認がとても重要です。口腔管理がきちんと行われていることで、治療がスムーズに円滑に進みます。
これからも口腔管理の重要さを伝え、患者さまのお口のサポートを出来るように努めてまいります。

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