口の健康の重要性

11 月は「いい歯(11.8)」の日にちなんで歯科が担当いたします。
福岡県歯科医師会では 11 月7、8 日を「いいな、いい歯」の日とし、11 月 7 日~ 13 日までを「いいな、いい歯。」週間として、歯と健康をテーマにたくさんのイベントが開かれています。

1960年頃の日本は子供の虫歯が大変多く「虫歯の洪水」といわれた時代がありました。現在はフッ素の普及や「8020 運動(80歳になっても20本以上自分の歯を保とうという運動)」などにより虫歯の数は激減しています。しかし高齢化社会を迎え、さまざまな口の健康の重要性がわかってきました。

特に「歯周病」と「オーラルフレイル」は健康寿命に大きく関わっているとされ、最近注目されている分野です。たとえばアルツハイマー型認知症は、歯周病によって悪化するとされています。歯周病菌による炎症性物質は血流に混ざり、全身へ運ばれ脳に到達することによりアルツハイマー型認知症が進行するのです。また、歯を失うと食事の際に噛みにくくなり、噛む回数が減ると脳への刺激が減ります。このことは認知症の発症リスクを高めることも分かっています。

誤嚥性肺炎は歯周病菌を含んだ唾液があやまって肺に流れ込むことで起こります。つまり、歯周病菌が増加することは肺炎のリスクを高めることになります。そのほかにも糖尿病や骨粗しょう症など様々な病気との関連が証明されつつあります。

「オーラルフレイル」は2013年頃より提唱された言葉です。「フレイル」とは、「身体の衰え」を表す用語で、様々な要因によって健康な状態と要介護状態(日常生活でサポートが必要な状態)の前段階を意味します。その中でも口の働きが弱まってくることを「オーラルフレイル」といいます。具体的には、
・食べこぼしやすくなった
・噛む力が弱くなった
・むせやすくなった
・滑舌が悪くなった
・口が渇きやすくなった
などの症状です。口腔の機能低下は全身の衰えと関連性が高いので、早めに発見して対応することが大切です。

厚生労働省では、地域のかかりつけ歯科を持つことが推奨されており、そこではこれらの検査ができるようになっています。
詳しくは、日本歯科医師会、福岡県歯科医師会のホームページをご覧ください。
福岡県歯科医師会では「いいな、いい歯。」クイズというコーナーもありますので、ぜひチャレンジなさってみてはいかがでしょうか。

戸畑共立病院
歯科口腔外科部長 古田功彦

【リンク】

日本歯科医師会 (https://www.jda.or.jp/)
福岡県歯科医師会 (https://www.fdanet.or.jp/index.php)
毎日のお口のケアが、未来の健康に繋がります

「歯が痛くなった」「銀歯が外れた」
何か問題が起きてからやっと歯科受診していませんか?

生涯を通じて食事を楽しみ、健康な毎日を過ごすためには、定期的な歯科受診と毎日のお口のケアの” 両方” が必要です。

まず、定期的に歯科受診することは早期発見・早期治療につながります。たとえ虫歯になったとしても削る量が少なくて済み、結果として通院回数も減らすことができます。また、定期的にセルフケア指導を受けることで、磨き残しの確認ができ、お口のケアへの意識を新たにするきっかけにもなります。 何か問題が起きた時のためにも信頼できるかかりつけの歯科医院をつくっておきしょう。

もちろん、定期的に歯科受診していてもその場かぎりでは意味がありません。毎日のお口のケアの継続が最も大切です。歯垢が停滞している時間が長ければ長いほど、虫歯や歯周病は進行していきます。総入れ歯で自分の歯が無いという方も、入れ歯の清掃を怠り、入れっぱなしにしていると、歯茎に傷ができてしまったり、細菌やカンジダ菌(カビの一種)が増殖したりします。お口の細菌や唾液は気管から肺に誤って入ってしまうことで発症する、誤嚥性肺炎の原因になることもあります。

お口の健康、ひいては全身の健康を守るためには定期的な歯科受診と毎日のお口のケアが必要です。最初から無理な計画を立てるのではなく、まずは「夜だけは時間をかけて丁寧に磨く」等の小さな習慣付けから始めてみましょう。この「いい歯の日」を機会にしばらく歯科医院を受診していないという方はまずはお近くの歯科医院を受診してみてはいかがでしょうか。

戸畑共立病院
歯科衛生士 波多江礼子


この記事の著者