世界脳卒中デーに向けて

 脳卒中は、「突然」起こります。休んでいる時、仕事をしている時、寝ている時、いつでも発症します。その症状は、片側の手足・顔の麻痺・しびれ、呂律が回らない、言葉が出ない、他人の言うことが理解できない、物が二つにみえる、視野の半分が欠ける、経験したことのない激しい頭痛などがあります。
 脳卒中は、血管が詰まる脳梗塞と破れる出血に大別されます。脳梗塞は、ラクナ梗塞、心原性脳塞栓症、アテローム血栓性脳梗塞、その他に分類され、治療や予防法が異なります。出血は、脳実質内に起こる脳内出血と、脳動脈瘤が破裂しクモ膜下腔に出血が広がるクモ膜下出血に分けられます。
 「顔の歪み 」「手の力が入らない」「言葉がでない・理解できない」突然このような症状が一つでも出た場合、脳卒中の可能性が高いので、すぐに救急車を呼びましょう。「しばらく様子を見る」のは止めてください。
 最近、脳梗塞に対して、rt-PA 静注療法や機械的血栓回収療法などの、より効果的な治療が出来る様になってきました。これらの治療は、開始までの時間制限がある上、出来るだけ早期に治療を開始したほうが回復が良いことが知られています。脳内出血や、脳動脈瘤が破裂して出血するくも膜下出血も、一刻も早く血圧を下げるなどの治療と、病態に応じた手術が必要となります。脳卒中を疑ったのに「様子をみる」と、大切な早期治療が出来なくなり、重い後遺症を残す可能性に繋がります。
 脳卒中の危険要因である喫煙、運動不足、不健康な食事は、簡単に、かつ直ちに実行できる予防手段です。他にも、高血圧、コレステロール、肥満、多量飲酒、心房細動、糖尿病、ストレスの多い生活に気をつけて、脳卒中を予防しましょう。
 脳卒中を予防して減らすこと、一旦発症した後は治療し、リハビリテーションをおこなうことなど、脳卒中の治療に関わる我々が出来ることは、沢山あります。

戸畑共立病院 脳神経外科部長
越智 章

脳卒中予防のための運動について

・脳卒中の危険因子
高血圧、心臓病、糖尿病、脂質異常症などの病気や、偏った食事、運動不足、ストレス、喫煙、多量の飲酒などの生活習慣が関係していると言われています。

・脳卒中予防のための運動
脳卒中予防にはウォーキングなどの有酸素運動が効果的です。筋肉のストレッチや筋肉の力をつけることも重要です。日頃から運動する習慣をつけましょう。定期的な身体運動は、運動不足の解消とともにストレスの軽減、睡眠不足の解消にもつながります。まずは継続して行える様に、短時間の運動、簡単に行える運動からおこなってみましょう。

戸畑リハビリテーション病院HP https://www.kyoaikai.com/reha/recommend/

・脳卒中発症後のリハビリテーション
 脳卒中になると脳に損傷を起こすためさまざまな障害が現れます。
それは後遺症となって残ることがあります。発症直後の治療と
して、医師による投薬などのほか、出来るだけ早期から身体の
機能を回復するため、理学療法士等によるリハビリテーションを
おこなうことが重要です。もちろん退院後も再発予防の治療と
リハビリテーションを続けることが大切です。

公益社団法人 日本理学療法士協会 理学療法ハンドブック シリーズ2 脳卒中より引用
https://www.japanpt.or.jp/about_pt/therapy/tools/handbook/

戸畑共立病院 リハビリテーション科
菊谷大樹

脳卒中予防、再発防止の食事

●1日3食、腹八分の適量で理想体型を維持
エネルギー摂取過剰になると肥満になり内臓脂肪が蓄積されます。そうすると血栓が出来やすくなり、動脈硬化を促進させます。内臓脂肪を減らす為には、適度な運動と食事に気をつけましょう。また、カロリーを気にしすぎて1日1食や2食にしてしまうと、その分ドカ食いになってしまいます。さらに食事を抜くことで次の食事で糖質や脂肪が必要以上に吸収され、太りやすくなるので1日3食が大切です。

●各栄養素、バランスのとれた食事を
厚生労働省の『日本人の食事摂取基準』では各年代の1日に必要な栄養素が明記されています。1日の摂取カロリー量をベースに三大栄養素である、炭水化物、たんぱく質、脂質の割合が重要であり、各種ビタミン、ミネラルが充足できるよう、野菜、果物、海藻などの摂取を心掛けましょう。

●脳卒中を予防する食材
野菜、果物
① 緑黄色野菜に含まれるβ-カロテンやビタミンCには抗酸化作用があります。動脈硬化の原因は血管壁のLDLコレステロールが酸化して固まることです。抗酸化作用によってLDLコレステロールが酸化されるのを防いでくれます。
② 苺やいちじく、ブルーベリーに含まれるポリフェノールにも抗酸化作用があります。
また果物はカリウムを多く含み、ナトリウムを体外へ排泄する働きがあります。しかし糖分も多いため、食べ過ぎると中性脂肪が増え、血糖値も上昇するので糖尿病の方や血糖値が高めの方は控えましょう。
青魚
鯖、鯵、鰯などの青魚にはDHAやEPAが多く含まれています。血栓を出来にくくし、LDLコレステロールを下げる働きがあります。
海藻類
水溶性食物繊維やカリウムを多く含みます。水溶性食物繊維は腸内でコレステロールや中性脂肪を吸着し、便と一緒に排泄してくれます。またカリウムは血液中の余分なナトリウムを排泄し、血圧を下げる働きがあります。低カロリーなので、ダイエットにもオススメな食べ物です。

戸畑共立病院 栄養科
荒岡和也