口の健康が家計を助ける

昨今、身の回りのさまざまなものが値上がりして、家計にも大きな影響が出ているかと思います。みなさんは自分の歯の本数が、将来に支払う医療費に影響するというお話をご存じでしょうか?歯を失うと、食生活への影響を想像する人が多いと思いますが、歯の本数、かみ合わせと医療費の関係を分析した研究によれば、各年代のほとんどで、歯の本数が多いほど医科の医療費が低く、歯が1本~数本抜けた程度でも、医療費が増えていく傾向がありました。例えば50代の男性を例にとると、歯が28本ある人の年間の医科の医療費は89,300円、19本以下の人の医療費は98,065円で約1割程度医療費が高くなっていることが報告されました。(「歯の本数が多く、かみ合わせが良いほど医療費が低い」サンスター 日本歯科医療管理学会雑誌 第 56 巻第 1 号)

2018年の全国抜歯原因調査(公益財団法人8020推進財団)によれば、歯が失われる原因で最も多かったのは「歯周病」です。歯周病と診断される人は、45歳以上では日本人の半数以上に上るといわれています。さらに歯周病の原因細菌は口の中の病気だけにとどまらず、狭心症や心筋梗塞、脳梗塞、糖尿病、認知症などさまざまな病気との関連性が明らかとなってきました。

したがって適切に歯周病を管理して歯と口の健康を保つことは、全身の健康状態を良くするだけでなく、将来の医療費を抑えて家計の負担を軽減することにつながるのです。

戸畑共立病院
歯科口腔外科部長 古田功彦

歯・お口の健康づくりサポーター

歯科衛生士は皆さんの「歯とお口の健康づくり」をサポートする、国家資格の専門職です。①歯科予防処置②歯科診療の補助③歯科保健指導の三つの業務が定められており、それぞれに専門性の高い知識・技術を必要とします。
お口や歯の健康と全身の健康の関係は長年様々な調査研究で明らかになり、昨今では生涯を通じて、歯・お口の健康づくりを支援するため、口腔機能管理のスペシャリストとして歯科衛生士の活動の場は大きく広がってきています。

当法人では、戸畑共立病院に7名、戸畑リハビリテーション病院に1名が病院歯科の歯科衛生士として、歯科医師の指示を受け協働し、歯科診療補助、がん口腔支持療法、口腔衛生管理、多職種連携のもと口腔健康管理に取り組んでいます。
そして退院後の歯科医療の支援の一環として、切れ目のない歯科医療を遂行するため、診療所歯科あるいは訪問歯科等に継続した口腔健康管理を依頼する活動をおこなっています。

虫歯や歯周病を予防し、お口の機能を健康に維持するためには、セルフケアはもちろん定期健診や専門的なお口のケアは必要不可欠です。
最近は人々の健康志向の高まりと共に、歯・お口の健康づくりへの関心は高まっていると感じます。しかしながら、入院患者さんに「かかりつけの歯科はどこですか?」「最後に歯科に行かれたのはいつですか?」と伺うと「ここ何年か言ってないね」「かかりつけはないよ」という声を、多く聞くことがあることも事実です。
皆さんはいかがですか?最近歯科にかかられたのはいつですか?
ぜひ、この機会にかかりつけ歯科を見つけ、ご自身の歯・お口の健康を守りましょう。

戸畑リハビリテーション病院 リハビリテーション科 主任
歯科衛生士 阪本 匡子


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