⦅下肢深部静脈血栓症・肺血栓塞栓症(エコノミークラス症候群)予防の重要性⦆

令和6年元日の能登半島地震から1ヶ月余りがたつ中、車中泊を続ける人の中には、エコノミークラス症候群(足の静脈に血の塊ができ、肺の血管に飛んで急に息ができなくなってしまう病気)に近い症状がみられる人が出ています。
行政からは弾性ストッキングの支給がおこなわれたり、テレビやネットからは予防を訴えるニュースが聞かれます。
このような震災によってエコノミークラス症候群がクローズアップされますが、我々医療に携わる人間にとっては日常的に起こる疾患として認知されています。
エコノミークラス症候群の主な原因は、脚の血液の流れが滞ることです。
脚を動かさないとふくらはぎの筋肉の中を流れる静脈の血液の流れが弱まり、血の塊ができやすくなります。脚の静脈にできた血栓が、血液の流れで運ばれて、肺の血管を詰まらせると肺血栓塞栓症が起こります。肺の血管が詰まると、呼吸困難(息苦しい)や胸痛などの症状が現れ、心肺停止(突然死)を引き起こすこともあります。また、水分不足(脱水)も原因となります。震災などで水の供給が滞っている場合は当然ですが、普段の生活の中では熱中症などがあります。また、高齢者はトイレへ行くのを避けるために水分を控える傾向があるので注意が必要です。
*血栓は8〜10時間でできると言われます。また、早期には症状の出ない人も多いため予防が大変重要となります。

☆予防方法
①下肢の運動
・足首を曲げ伸ばしして上下に動かす運動をする
(当院YouTube参照:https://youtu.be/cpUxnqs5bNg?si=h6yOhd_ngSZgfOPP
・歩行する
・椅子や車などのシートに長時間座った姿勢をとらない
・ふくらはぎのマッサージをする
②水分補給
・トイレを我慢せず水分を摂る
・脱水を招くアルコールやコーヒーなどのカフェインを多く含む飲み物などを控える
③弾性ストッキングの着用
*着用に関して注意が必要な方(脚の血流の悪い方や皮膚の弱い方など)もおられます。

最後に、症状(呼吸困難感や下肢腫脹等)のある方は、直ちに医療機関を受診して下さい。
このコラムがエコノミークラス症候群予防の一助になれば幸いです。

共愛会 戸畑共立病院
整形外科 濱田賢治

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