抑制廃止宣言

これまで多くの病院や施設で、安全のためとして、一方的にベッドや車椅子に縛りつけたり、つなぎ服を着せたり、様々な形で拘束が行われてきました。 拘束により、身体的には筋力低下・関節拘縮・血行不全・心肺機能低下などを招きます。自由を奪われることにより、精神的な弊害も大きく、情緒不安定、 意欲の低下、痴呆の進行などを起こす可能性があります。

平成10年10月抑制廃止福岡宣言が出され、また平成11年11月には厚生省より、介護保険施設等における身体拘束の禁止が通達されました。 私たちは、昨年より“抑制廃止委員会”を設置しこの問題に積極的に取り組んでおります。

まず、車椅子の安全ベルトを廃止いたしました。車椅子はあくまでも移動の手段と考え、できる限りソファにて自由にくつろいでいただけるよう努めております。 不穏時や、点滴中も拘束することなくできる限り職員の見守りにて対処したいと考えております。もちろん安全には十分注意を払っておりますが、転倒などの 不慮の事故も予測されます。抑制廃止をすすめるにあたって、不安や疑問をお持ちの方にはいつでもご相談に応じます。

身体的なことばかりでなく、薬による行動制限も拘束と考えられており、できる限り不必要な投薬は避けたいと考えております。職員の言葉や態度も場合によっては 目に見えない拘束と考えられ、十分気をつけたいと思います。皆様があやめの里において、安全かつ人間性豊かな生活が送れますよう、職員一同努力して参りますので、 なにとぞご家族の皆様のご理解、ご協力をお願い申し上げます。

平成12年7月24日

この宣言以後、車椅子のベルト、ベッドの四柵使用などはすべて廃止しました。危険予知困難な認知症の方も多くなり、高齢化とともに基本的な身体機能も低下する中で、 転倒などの事故発生のリスクは高くなっています。

しかしながら、抑制から開放された方は、落ち着きを取り戻し、本来の生き生きとした表情になり、意欲が出てきます。なぜ抑制されるのか理解できない方を、殆ど介護する側の都合で 一方的に抑制するのは許されないことです。抑制を外そうとして、思わぬ危険な行為に出ることもあります。

できる限りお一人お一人に合わせた適切な見守りや介助、連携の取れた効率のよい介護などで対応していますが、職員の数も限られていますので、目の届かない僅かな時間での 事故の発生の危険性がどうしてもあります。その危険性を最小限に抑える努力をしつつ、抑制をしない、人間的な暖かいケアを続けていきたいと思います。