当院8年間の前立腺癌治療成績

2016年 師走

  当院は、これまで8年間に前立腺癌の治療として外照射療法(IMRT)と密封小線源治療を行ってきました(約800例)。最近の話題では、外照射療法のトモセラピー機器の導入(本年5月)、および市民の皆様への市民公開講座(本年7月)に実施しております。転移のないすべての限局性前立腺癌と、局所浸潤癌(T3と分類されます)の患者様では、保険診療での根治放射線治療を受けられます。
その中で、密封小線源治療は、短期間で治療できる点で患者さんのメリットがあり、平成20年7月より導入し、平成28年10月までの8年4か月間に434例の治療を実施しました。治療方法は下表のように分類しておりますが、がんの組織型やTステージ分類によっては、外照射療法やホルモン療法を併用することで治療を行っております。また高齢者で短期治療をご希望の方、あるいは血液透析患者様でも実施可能ですので、ご相談ください。

当院における前立腺癌に対する密封小線源治療の適応(2016年12月)

リスク群分類およびT3 治療症例数 治療方法
低リスク群

GS≦6、PSA<10, T2a

176例 (40.5%) 密封小線源治療単独

(重量が大きい場合には治療前ホルモン療法)

中リスク群

GS≧7, PSA<20, T2b

188例 (43.3%) 密封小線源治療(高線量)+短期ホルモン療法

外照射療法+密封小線源治療(組織系グリソンスコア4が中心)

高リスク群

GS≧8, PSA>20.0, T2c

50例 (11.5.%) 外照射療法+密封小線源治療+6か月間のホルモン療法

(トリモダィティー)

T3症例

T3a, T3b, GS5, PSA>20

19例 ( 4.4%) 外照射療法+密封小線源治療+ホルモン療法*
外照射療法後局所再発 1例 (  0.2%) 立体多数生検後、救済局所密封小線源治療

(当院倫理委員会承認済み)

T3症例では治療後再発例が少ないですがみられていますので、性機能温存希望がなければホルモン療法は治療後補充2年間を勧めております。

各治療法と治療日数(すべて保険診療です)

治療方法 治療前線量計画検査 治療日数
密封小線源治療 1泊2日 検査入院

(腰椎麻酔)

3泊4日 治療入院

(腰椎麻酔:治療時間は約90分)

強度変調放射線治療

(トモセラピー)

外来通院でCT検査実施 短期入院または通院

8週間(38平日:治療回数)

外照射療法+密封小線源+ホルモン療法

(トリモダリティー)

外来通院でCT検査実施

 

1泊2日 検査入院

(腰椎麻酔)

外照射療法 5週間(23平日)

3泊4日 治療入院

(腰椎麻酔:治療時間は約90分)

放射線治療の場合、治療後の効果判定はPSA値の推移で行いますが、ホルモン療法などに関係なく、治療後最も低いPSA値+2.0以上の上昇で、3回連続上昇する場合が、PSA再発と定義されますが、がんで生命を失うことではありません。

放射線治療後のPSA値は一過性の上昇(PSAバウンス現象)で、のちに低下する場合がありますので、当院の成績ではこのバウンス現象を除いたもので解析・提示しております

当院の密封小線源治療の成績(平均観察期間 45か月)

リスク群分類およびT3 治療方法 PSA非再発率
(治療後にPSA上昇がないもの)
低リスク群 密封小線源治療 100%
中リスク群 密封小線源+ホルモン療法

または

トリモダリティー

98.9%
高リスク群 トリモダリティー

密封小線源+ホルモン療法(少)

98.0%
T3症例 トリモダリティー 84.2%

このように、当院での治療症例では、短期間ではありますが全体の98.6%でPSA再発はなく、良好な成績と思われます。PSA再発した患者様では、すべてホルモン療法を行い、その後にPSAが低値となっておられます。

さらに、この8年間に前立腺癌で死亡された患者さんは1例もなく(疾患特異的生存率(CSS)は100%)、他の原因で残念ながら死亡された患者様が7例で、他臓器癌、心臓疾患などが原因でした(全生存率(OS)98.4%)。

放射線治療に伴う副作用(有害事象)が懸念されますが、当院の結果では、肉眼的血尿、一過性尿閉、血便が頻度の多い症状で、内服薬で改善しなかった患者様は、以下の頻度でした。

症状 処置内容 発生頻度
血便 大腸内視鏡止血術 7例(1.6%)
肉眼的血尿 尿道内視鏡止血術 4例(0.9%)
2週以上の尿閉 カテーテル留置または導尿 4例(0.9%)

このほか、一過性の切迫性尿失禁6例(1.4%)、治療後の疼痛6例(1.4%)がありましたが、内服薬で調整できることが多く、治療実施した全体の90%以上の患者様は上記のような併発症がなく治療できております

 

本邦の密封小線源治療後の性機能調査報告では、治療後にホルモン療法を中止すれば約50%の患者様で、機能温存ができるとされています。当院での正確なデータはありませんが、治療後安定した段階で、バイアグラ、シアリスなどの薬剤内服で性機能リハビリテーションを開始し、その後に性機能が治療前同様に服しておられる患者様の感謝の声を聴くと、前立腺がんに対する放射線治療は本当にいい治療法だと実感しております。

文章責任:泌尿器科部長 山田 陽司

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